ハッチョウトンボ

ハッチョウトンボの写真を撮りに行った時の話。
このトンボは日本最小のトンボで、水深が極浅く、水のきれいな湧水地等でしか生息できないため県内でも発生地は限られている。
その珍しさや愛らしさから虫好きならずともファンが多く、地元の地方新聞でも毎年その発生時期の訪れが報じられるほどだ。
。また同紙では写真コンテストのようなものが掲載され、その中には必ずと言っていいほどこのトンボが登場する。

こういう写真の殆どが朝露を無数に身にまとった姿で「生きた宝石」と称えられ、なるほど確かに美しい。
以前2回このトンボを見に行ったが、2回とも日の出後だったので朝露をちりばめたような写真が撮れなかった。
今回こそはと5月の下旬、有名な産地である古座川目指してまだ暗いなか車を走らせた。
現地にはようやく薄明るくなった頃到着したのだがすでに2人の先客がスタンバイしていた。
かなり年配の方で、60歳代だろうか。2人は休耕田脇の道に椅子に座り、三脚を2つ構え片方にカメラ、片方にクリップをつけてトンボのとまっている草の葉をはさんでいた。
なるほどこの方法なら足場の悪い田圃にカメラを持ち込まずにすむし、まだ薄暗い中手ブレの心配もない
こっちは長靴に履き替えて危険を承知でカメラ片手にぬかるみに入る。何回かシャッターを切っていると一人が田圃に入ってきてトンボを持って行った。
この時間帯なら気温もひくく、トンボも飛べずにいるようでとまっている枝を折ってもじっとしているようだ。

しかしその後その人はおもむろに霧吹きを取り出しトンボにシュッ シュッと吹きかけはじめた。
ゲッ・・・やらせじゃん。 口にはださなっかたがちょっとショック。確かに田圃内のトンボにも水滴はついているものの新聞で見る写真ほどでもない。草やクモの巣にはきれいについているのだが・・・

これまで見てきた写真の全てがこういう方法で撮られたものだとは思いたくはないので今日は条件が今ひとつなんだと自分を納得させた。

それに生態写真でなく、あくまで作品作りなんだから当たり前のことなのかもしれないし生態写真という点では自分も全然自信がない。
食草ではない植物にたまたま飛来しただけというのが多々あるからだ。
どちらにしてもまた再チャレンジしていつかやらせなしの「生きた宝石」を写真に収めたいものだ。

虫ですからこんなことも・・

今回はこれくらいがせいぜい。

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